睡眠時無呼吸症候群(SAS)の要因の一つ
そこで、SASの方には肥満のが多いから、高血圧なのであって、SASと高血圧には因果関係はないのではないか——と思う方がいらっしゃると思います。
ここに、同じ体重で、健康な方と睡眠時無呼吸症候群(SAS)の方の高血圧になる割合を比較した研究結果をご紹介します。
なんと、SASの方が2倍、高血圧になりやすいのです。つまり、SASは高血圧の危険因子と考えられるのです。つまり、SASは高血圧の危険因子と考えられるのです。
その要因は、次のようなものです。
*夜間の血液中の酸素不足や覚醒反応(無呼吸状態の時に酸素不足で脳が目覚めてしまう現象)により交感神経が興奮する
*無呼吸・低呼吸により胸腔内の圧力が下がり、心臓に戻ってくる静脈の血液量が増えて、心臓に負担がかかる。
加えて厄介なことに、SASではない高血圧の患者さんは、夜間は副交感神経が優位に働くため、比較的血圧が低めに抑えられていますが、SASで高血圧の方は、夜間も交感神経が働き、血圧が高い状態が続きます。
つまり、SASの方は一日中血圧の高い状態にさらされているのです。
さらに、もう1つの高血圧の要因、肥満が加わるとさらに状況は悪くなります。
高血圧自体は、目立って苦痛を感じませんが、怖い心疾患や脳卒中につながります。早めに耳鼻咽喉科などの受診をお勧めします。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、心不全、不整脈、突然死などの心疾患との関連性が高いと言われています。その理由として、慢性的な酸素不足、交感神経の活性化、高血圧——などが考えられます。
統計によれば、SASは心不全の約6〜7割に合併し、さらにその予後を悪くするそうです。心不全に合併するSASは中枢型無呼吸が多く、心不全の状態と無呼吸の重症度とが関連するとも言われています。
少しでもSASが疑われたら、耳鼻咽喉科などの専門の医療機関を受診することをお勧めします。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)により、高血圧になることは前述のとおりです。高血圧は脳卒中のリスク要因の一つです。
脳卒中は、命に関わるばかりでなく、たとえ一命を取りとめても、重度の後遺症が残ることも少なくありません。
SAS患者さんの脳卒中発症率と死亡率は、通常の人の2倍近くになることが確認されました。
早めにSASの治療を行うことの大切さが分かりますね。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の方の約50%に、糖尿病あるいは糖代謝異常が発症していました。
その理由は、睡眠とインスリンの関連性です。インスリンは、膵臓から分泌され、血液中のブドウ糖を全身の細胞に取り込んでエネルギーに変える働きをしています。このインスリンの働きが低下すると、血糖値が下がりにくくなります。
簡単に言えば、血糖値が下がらない状態が続いているのが糖尿病です。
そして、通常は、睡眠中には副交感神経が働きインスリンの分泌が亢進されます。ところが、SASの方は、睡眠中も交感神経が優位に働いているので、インスリンの分泌が抑制される、つまり、血糖値が下がりにくくなります。つまり、これが続けは、糖尿病になってしまうのです。
それを示すこととして、SASの治療を行うことで糖尿病が改善されるという報告がなされています。
一度、耳鼻咽喉科などの専門の医療機関で、検査を受けることをお勧めします。